阿麻作品集


「左利きの芸当」
手習いではじめた左利きの芸当が、私にとって最初の歴史だった。
あのとき土足で雪土を踏みにじっていた
えたいの知れない軍靴のひびきにさえ 女子供の目はくらんで釘付けとなった
ちょうどそんな頃に、とある奥地で
いまでも自分の手をよく見つめてくれたのならわかるが
じつはたった一つ
致命的な誤りを犯してきたことがある

手習いにしては悲しいほど身に付きすぎている・・・

あのとき右手を、無理やり持ち替え直させていたいちばん最初の妥協やあいづち、は
今の世代ではとっくの昔、度外視されるはずだったのにもかかわらず
わたしの目はむかし以上にくらみきったまま、
まさに残酷すぎるほどの緻密さで、割り箸を持つ利き手の意義あるなしの根底にまで、
今日も事象をおとしめながら突き進む。






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